2019-03-06 15:00
社会
国境なき医師団、今も続くロヒンギャの人道危機を報告

合計105万件の診療を実施
国境なき医師団(MSF)によると、2017年8月にミャンマーでイスラム系少数民族のロヒンギャの掃討作戦が実施されて以来、約70万人のロヒンギャが安全を求めてバングラデシュに避難し、現在では同国コックス・バザールの難民キャンプで約100万人が暮らしているという。MSFは2017年8月から2018年12月までの間に、ロヒンギャ難民と受け入れ地域の人々を対象に合計105万件の診療を行っている。
MSFによると、緊急支援を始めた2017年当初は暴力によるケガの治療や基礎的な医療ニーズが高かったが、現在では家庭内で発生した暴力や性別およびジェンダーによる暴力などの負傷が増えているという。
劣悪な環境による疾患が蔓延
劣悪な環境で暮らしている難民キャンプでは、急性水様性下痢が多発。清潔な飲み水と手入れの行き届いたトイレは下痢予防に必須な上、衛生改善のための健康教育活動も必要だ。当然、このような劣悪な環境は他の病気を引き起こすことにもなる。難民キャンプでの生活は、石けんと水で手を洗う単純なことですら困難であり、手洗いで抑制できる一部のウイルス性感染症や皮ふ病ですら予防が困難だという。
また、ミャンマー国民として認められていないロヒンギャはラカイン州で予防接種を受けることが困難であるため、予防接種を受けていない人が多く、MSFはジフテリアやはしかなどの集団予防接種を何度も行っている。しかし、集団予防接種をしても流行のリスクは残るという。
緊急支援から長期的な人道支援へ
多くのロヒンギャが暴力を受けたり目撃したりしているため、MSFは個別・集団の心理ケアや治療も行っている。MSFによると、一定の効果が見られ、人々の心の健康が改善されているという。一方、高齢者を中心とした糖尿病や高血圧などの慢性疾患に対する支援ニーズへの対応は十分ではなく、慢性疾患の中でも救急治療が必要な患者のみの受け入れにとどまっている。
性暴力に関しては緊急事態発生当時と変わらないが原因は多様化。また、性感染症を長いこと治療できずにいる女性もいるという。
コックス・バザールでは難民への支援にとどまらず、地元バングラデシュ住民への治療も増加。緊急支援から長期的な人道支援へ状況が変化しているという。
(画像はプレスリリースより)
(C)Daphne Tolis/MSF
外部リンク
国境なき医師団
https://www.msf.or.jp/
国境なき医師団の活動ニュース
https://www.msf.or.jp/news/
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