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2025-10-19 10:30

社会

人権の空白地帯:ミャンマーの詐欺ファームで起きた拷問と国際社会の沈黙

人権侵害
暴力と拷問の実態:強制労働と処罰の嵐
中国警察とミャンマー当局の合同捜査により、北部ミャンマー・コーカン地域を拠点に詐欺ファーム(通信詐欺施設)を運営していた組織が摘発された。

組織の中心人物、Xu Laofa(Xu Faqi) は、2019年以降、14の詐欺施設を建設または賃借し、数万人を誘拐または拉致して詐欺業務に従事させた疑いがかけられている。

捜査により、労働者に対する苛烈な迫害が明らかになった。命令を拒んだ者の指を切断し、竹棒での暴打、食事・睡眠の制限、暗室拘束、さらには殺害に至る事例も報告されているという。

被害者が脱落したり従わなかったりした場合、拷問や身体への傷害で意思をねじ曲げられてきたという証言もある。

中国公安部は、これまでに詐欺関与疑惑の中国籍被疑者約5万7,000人を逮捕したと発表しており、捜査は国境を越えた犯罪網の広がりを物語っている。

これらの詐欺ファームには、通信詐欺・オンライン詐欺を拡大するため、武装勢力との結びつきや治安部隊の黙認が関与していたとの見方もある。

被害者の多くはパスポートを没収され、外部との接触を断たれた状態で強制労働を強いられていたという。

国際社会の沈黙と責任追及の難しさ
こうした詐欺ファームの存在は、国際的な人権・法制度の網が届きにくい “空白地帯” であると指摘できる。ミャンマー国内の統治力が弱体である地域を悪用し、組織犯罪が横行しているということだ。

関係各国の協調行動や司法協力がカギとなるが、執行力と透明性には限界があり、中国当局はすでに数千件の起訴案件を進行させ、主犯の引き渡しも実施した。

しかし、被害者の補償・保護制度はまだ不備が目立ち、拷問被害や強制労働の訴えが国際法や人権条約の枠内で十分扱われているとはいいがたい。

また、メディア報道や世論が注目する中国人被害者のケースは可視化されやすいが、他国出身者の被害や逃亡・行方不明例は埋もれがちである。

この構造的な見落としは、国際人権機関や被害者団体が 問題を扱う際の課題であろう。

このように詐欺ファーム地域は人権保護の真空領域であり、被害者の証言を集約し、加害者に責任を問うためには、国際社会・司法機関・市民社会が連携して監視と実効性ある制度化を図る必要がある。

(画像はGlobal Timesより)


外部リンク

Chinese police crack down on fraud gang in northern Myanmar
https://www.chinadailyasia.com/

China cracks major transnational fraud case led by Myanmar-based Xu Faqi, involving illicit gains over $150 million: authority
https://www.globaltimes.cn/

Chinese police investigations reveal brutality in fraud farm operations in Myanmar
https://www.straitstimes.com/

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