2025-10-17 10:30
経済
国境を越える搾取:タイで起きたミャンマー人労働者の大量解雇と企業責任

解雇と脅迫に直面した1,400人超の労働者
タイの電子機器メーカーであるカルコンプ・エレクトロニクス(Cal-Comp Electronics(キンポ・グループ傘下)、以下「CCET」)で、1,400人を超えるミャンマー人労働者が突然解雇され、脅迫や拘束を受けたと報告された。労働者の一部は、組合活動や待遇改善を訴えた後に解雇されたと主張。CCETはApple、HP、Hitachi、Konica Minoltaなど大手テクノロジー企業のサプライヤーであり、問題はグローバルサプライチェーン全体の人権責任に波及している。
立場の弱い移民労働者が声を上げづらい構造の中で、今回の事件は「見えない労働」の実態を浮かび上がらせた。
企業の対応と沈黙
人権団体のBusiness & Human Rights Resource Centreの照会に対し、CCETは「業務効率化に伴う合法的な人員整理」と説明し、労働法を遵守したと主張。親会社キンポ・グループも同様の回答を示した。一方、Konica Minoltaは国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」やOECDガイドラインに基づき、事実確認を進めると表明。
しかし、AppleやHPは沈黙を保っており、企業間で対応の温度差が際立っている。供給元の労働環境について説明責任を果たす姿勢が、今後の信頼を左右するだろう。
国際基準と企業の責任
ILO(国際労働機関)は、強制労働や不当解雇の禁止、労働者の救済を基本原則として掲げている。国際的企業は国境を越えてもこれらの基準を遵守する責任を負う。とりわけ移民労働者の保護には、企業が自らのサプライチェーン全体で人権デュー・ディリジェンスを実施し、苦情処理制度を整備することが不可欠だ。
CCETは2019年にもミャンマー人労働者への過剰な採用手数料問題で和解した経緯があり、今回の大量解雇は企業が同じ過ちを繰り返していないか、そして国際労働基準と整合した行動をとっているかを問う出来事である。
(画像はプレスリリースより)
外部リンク
Business & Human Rights Resource Centre
https://www.business-humanrights.org/en/
Business & Human Rights Resource Centreのプレスリリース
https://www.business-humanrights.org/en/
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